6. 内視鏡検査に年齢制限はありますか?

内視鏡検査を安全に施行できるよう万全の体制を整えており、開院2年の段階で総数5000件(胃内視鏡2300件、大腸内視鏡2700件)になりますが大きな合併症なく終えています。しかし検査の性格上、合併症が全く零というわけにはゆかない可能性はあり(避けがたい状況という意味で偶発症 という言葉を使用していますが、実際は、医療側、患者さま側の複合要因で発生する検査の合併症です)、実際、消化器内視鏡学会では、現在まで何度か全国集計を行い実態を調査しています。

消化器内視鏡学会の「偶発症に関する第4回全国調査報告」によりますと、まず、咽頭麻酔・鎮静剤・鎮痛剤等前処置による偶発症は0.0059%、死亡例は0.0001%の割合で発生しています。次に、上部消化管内視鏡検査(胃内視鏡)に伴う偶発症は、0.012%の割合で起きており、死亡例が、0.00076%の割合で発生しています。これらには内視鏡治療が含まれておりますが、それらを除いた、内視鏡観察のみでの死亡率は50万検査に1例の頻度(約0.0002%)となっています。一方、下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡)の偶発症は0.069%の頻度で発生しており死亡例は0.00088%の割合で発生しています。死亡例の大多数は大腸穿孔によるものですが、この点は、幸い、私自身大腸内視鏡に携わっております1981年から現在まで、「大腸内視鏡観察+大腸ポリープ外来切除レベル」の大腸内視鏡検査では未だに穿孔の経験はなく、今後もかなりの確率で回避できると考えていますが、赤丸をつけました様に、心疾患、脳疾患の検査時の発生(持病の増悪)は、わずかな確率ではあっても防ぎようがなく、ご高齢の方、今まで同疾患の既往がある方には、留意し検査にのぞんでいただくよう申し上げにくいことではありますが再度お話をもたせていただいております。

さらに重要な事は、死亡例のほとんどは高齢者に集約されていることです。この点につきましては、NCI(米国国立がんセンター)が75歳以上の高齢者では大腸内視鏡のリスクが増大することから適応は吟味され慎重であるべきであるとの勧告を2009年6月に出しており、炭酸ガス送気による内視鏡検査をいち早くとりいれておられる神奈川の内視鏡専門クリニック鵜川医院のブログにもアップされています。
http://www.cancer.gov/ncicancerbulletin/061609/page3
http://blog.ukawaiin.com/
以上を踏まえまして、本院では内視鏡検査時の合併症(偶発症)発生リスクの高い、75歳以上のご高齢の患者さま、重篤な心疾患、脳疾患を有する(既往含む)の患者さまの内視鏡検査につきましては(医療機関からのご紹介の場合でも)検査の必要性とリスクを再度判断させていただいた上で、加えて、患者様ご自身の本院での内視鏡検査ご希望の確認およびサポート体制を前提に検査をお受けしております。無床施設(入院設備がない)であることをご理解の上、場合によっては個人情報に踏み込んだお話をおうかがいする場合もありますことをご了承ください。

一方、小児期の患者さまの内視鏡検査につきましては、前職時代から現在も兵庫県立こども病院 他で多くの経験を有しています。クリニックにおきましても10歳未満の患者さまの胃内視鏡検査、大腸内視鏡検査を施行していますが、現在までの経験を踏まえて個別に御相談させていただければと考えていますので遠慮なくご連絡ください。

 

 

 

5. 1年前に大腸ポリープを切除後、またポリープがみつかったのですが新たに発生したのでしょうか?

非腫瘍の過形成病変はもちろん、良性腫瘍である腺腫では状況によっては数年単位でも大きさは変わらないと考えられており、今回大腸内視鏡検査時に同定された病変は、1年前まで遡っても存在していると考えるのが妥当であり、その段階で発見できなかったものと考えられます。

大腸の検査手段としては、最近の機器の進歩で2mm程度でも病変の認識が可能であり、かつ、治療も同時に施行できる大腸内視鏡検査がベストであることはいうまでもありませんが、病変を発見しにくい場合として(前処置が悪く残便がある場合を除くと)蠕動亢進したIBS(過敏性腸症候群)パターンによる深い襞間の場合と解剖学的な屈曲部における観察死角部位の問題があります。

左図に死角部位を示しますが、襞の深い上行結腸(A)、屈曲部(特に越えてすぐの内側)である肝彎曲部(B)、横行結腸中央(C)、脾彎曲部(D)、SDJ:S状結腸下行結腸移行部(E)、RSJ:直腸S状結腸移行部(F)では、襞や屈曲部をかき分ける様に何度もチェックする必要がありますし、肛門入ってすぐの直腸下部(G)では内視鏡反転操作をして逆方向から観察する必要があります。

他院で大腸内視鏡検査を受けて異常を指摘されなかった部位にあらたに病変がみつかったクリニックでの実例を3例お示しします。第1例、第2例は比較的大きな病変であり、同じく死角部位である肝彎曲に存在していました。前者は蠕動が強いIBSパターン、後者は過長な大腸で残便があるなど前回検査で見いだされなかった要因が推定できますが、慎重な観察が必要であることを物語っています。第3例は4mm大のIIc病変ですが、小さな病変でも陥凹型腫瘍は早く進展すると考えられており、実際1cm以下のsm癌(粘膜下層浸潤癌Q&A2の図B以深)も存在しますので、特に死角部位は何度もチェックする必要があることを肝に銘じて検査に臨むことが重要です。また、言うまでもなく、元来発見が難しい場所であるわけですし、そうでなくとも小さな病変ではその場で切除しないと再検査時に病変が発見できないこともありますので(クリニックでは粘膜付着部2cmをめどに一括切除できる病変が基準)外来即時切除が重要です。

 

 

 

4. ピロリ菌治療の方法について教えてください

ピロリ菌は抵抗力のない3歳以下に経口感染し(ピロリ菌感染している方の胃液が口から入って感染する:親や祖父母から口移しで食事をもらったり幼児同士で逆流した胃液を口に入れるなど)、炎症を引き起こします(持続=慢性胃炎)。逆に言うと、3歳までにピロリ菌感染しなければ生涯ピロリ菌は陰性の状態であり、夫婦間でも感染しません。ピロリ菌陰性の方は慢性胃炎がないわけですので、胃の壁は丈夫で表面には粘液ゲル層というわれるクッションがあり強力な酸である胃液が直接胃粘膜に接触しないようになっています。従って、痛み止めを服薬する際を除いて胃の壁を保護する“胃炎の薬”は不要ということになりますし(胃と食道の境界である噴門の癌を除いて)胃癌は発生しないといってよく、近々胃癌検診から除外されると考えられています。

ピロリ菌に感染した場合は、萎縮(胃の壁がただれてもろくなり結果として薄くなること)が進展し、最終的には60歳以上(早ければ50歳代:胃酸が強い十二指腸潰瘍例では進展が遅いなど個人差があります)で腸上皮化生という胃癌の前段階に至ります(ここまで来るとピロリ菌が自然消褪する場合があります→焼け野原状態でピロリ菌が棲めなくなる)。従ってピロリ菌陽性の場合はできるだけお若い時に治療することが重要です。ピロリ菌陽性の場合は、慢性胃炎があり、胃炎の薬は有用とはいえますが根本治療ではありません。またピロリ菌に有効な食品やサプリメントも多くが報告されていますが、いずれもピロリ菌の発育を抑える作用にとどまり単独で菌を消失(以下除菌といいます)させるものではなく、ピロリ菌の除菌がもっとも有効かつ唯一の根本治療です。また専門医であれば内視鏡所見のみで、ピロリ菌陽性陰性の判定、陽性の方の萎縮/化生の進行状況を即座に判定できます。

ピロリを除菌するためには抗生剤を含めた3薬剤の服用1週間が必要です(1次、2次除菌の保険適用内容の場合:いずれも副作用は軽微です)。本邦では残念ながら消化性潰瘍の診断(内視鏡や透視の画像診断による)がある場合のみ保険診療が適用されますが、ピロリ菌感染が、潰瘍はもちろん胃癌の最大の原因であることが判明した現在、感染が判明したら除菌すべきと考え、クリニックでは、潰瘍を有さない方や保険適応の除菌法で不成功に終わった方に関しても自由診療で対応しています(詳しくは自由診療の項目を参照ください)。具体的には、内視鏡検査をすればその95%はその場で観察しただけで判定可能ですのでピロリ感染者を“胃が荒れているだけ”として見過すことがないようにしていますし、最近オプションでドックに入っているピロリ抗体やペプシノゲンでピロリ陽性が判明していれば内視鏡検査を強要することなく除菌、また確認が必要な場合は、クリニックに設置している尿素呼気試験測定装置(Ubit300)で20分でピロリ菌感染が判明します。

第1次除菌は2000年にプロトンポンプ阻害剤(タケプロン、オメプラール、パリエットなど)+アモキシシリン(サワシリン、アモリンなど)+クラリスロマイシン(クラリス、クラリシッドなど)3剤を1週間の治療法として、また、第2次除菌は2007年8月にプロトンポンプ阻害剤(同上)+アモキシシリン(同上)+メトロ二ダゾール(フラジールなど)3剤1週間の治療法として保険適応になりました。第1次除菌の成功率は約85%で不成功はクラリスロマイシンの薬剤耐性が主な原因です。第1次除菌不成功例の残った15%の方に対しての第2次除菌の成功率は約90%であり2回の治療で100人中98.5人と大多数が除菌に成功します。2次除菌不成功の原因は1次除菌のクラリスロマイシンほどではありませんが、メトロ二ダゾールの薬剤耐性が関与しています。2次除菌の薬剤組み合わせの方が1次除菌より強力な治療内容ではありますが、2次除菌治療はあくまで1次除菌不成功例を対象として保険適応になっておりますので、保険診療下では2回の治療まで選択の余地はなく薬剤耐性検査も結果論ではありますが不要ということになります。クリニックでは、開院以来10ヶ月で約200件の除菌治療を施行しておりますが、潰瘍を有する保険適応除菌治療に加えて、保険適応外、すなわち、潰瘍を有していない方や内視鏡、胃透視など画像検査未施行の方の第1次、第2次除菌はもちろん、第2次除菌で不成功に終わられた方々に対する第3次除菌以降に関しましても保険診療10割相当額の実費による自由診療で対応する準備を整えております。また申し上げましたように、尿素呼気試験測定装置(Ubit300)を設置しておりますので、ピロリ菌検査が初めての方であっても1回の受診で検査、治療薬投薬まで完遂できます(除菌判定は除菌治療終了後4週間以降に尿素呼気試験で判定する必要があります)。

 

 

 

3. 大腸ポリープは入院しないでその場で切除できるのでしょうか?

Q&A2で述べましたように、内視鏡治療対象となる腫瘍性病変は40歳を越えますと半数の方に見つかります。大腸良性腫瘍(=腺腫 一般的には大腸ポリープを代表している病変)は、高頻度に認められ、陥凹型腫瘍など一部を除き経過観察していてもすぐには大きくならない場合が多いことからもすべての病変が進行大腸癌になるとは考えられず小さな病変は経過観察する施設も一部にありますが、そのいずれが進行癌に発育進展するか確定できない以上、安全かつ短時間に切除できるのであれば放置を望む方はいないと思いますし、切除治療が外来治療可能であれば好んで入院を希望する方もないでしょう。

入院しないで外来治療することをEDS(Endoscopic Day Surgery 日帰治療)といいますが、切除時は勿論、切除前後のリスクマネージメントに配慮できれば、Q&A 2で述べましたように、内視鏡治療対象となる大腸腫瘍の99%は、外来で診断と同時に治療まで1回で完結させることができ、私自身、前職の神戸大学を含めて1983年以降多くの施設で施行させていただいてきました。

そのメリットは、
●大腸腫瘍性病変は40歳以上になりますと高率に認められ、その切除が大腸癌の予防に重要であること
●大腸には襞があり特に小病変はその場で切除しなければ、襞の陰に隠れ存在がわからなくなることがあること
●大腸腫瘍性病変の内視鏡切除か外科手術切除かは、癌の深部浸潤の有無の判定が重要で、生検(組織を一部のみ採取すること)は意味がなく病変全体を切除して初めて正確な評価が可能となること
●胃と異なり、大出血を来す太い血管が表面近くにあることは稀であること
●大腸内視鏡は下剤による前処置が必要であり、検査回数が増えること自体が患者様に負担を強いること

などです。

しかし、病理学的に十分な評価をするために、外来切除の病変の大きさの上限としては一括切除できる大きさ、すなわち、病変が大腸粘膜に付着している部分が2cmまでがめどと考えています。Q&A2に表で示していますが、開院後5ヶ月間で施行した大腸内視鏡442件のうち234件(296病変)で大腸腫瘍を切除しましたが、外来切除しなかったのは3病変のみで他は外来切除しています。クリニックで外来切除した比較的大きな病変として、上段に掲載の有茎性病変は頭部の腫瘍部分は2cmを越えていますが茎の部分はほぼ1cmであり出血のリスクに対処しながら外来で切除しました。下段は盲腸の襞間にまたがるように存在するIIa病変ですが十分な局注の上、一括切除施行しています。

一方、外来切除しなかった病変は3名3病変で、LST-NG病変は同時に見つかった外科手術対象胃病変のため両者あわせて外科による腹腔鏡手術、LST-G病変は西宮で入院の上、ESD(切開剥離法)で、Is病変は基礎疾患が多く副腎皮質ホルモン、免疫抑制剤服用例であったため西宮で入院の上、EMRで、両者とも私自身で切除しています。

大きさなどから総合的に外来か入院かの判断を迷う病変では、安全確実を優先することはいうまでもないことですが、より小さな腫瘍性病変は時間的、精神的、経済的負担を軽減するためにも外来切除し、即時クリーンコロンを目指すべきと考えています。

 

 

 

2. 大腸ポリープと大腸がんの関連を教えてください

ポリープとは、隆起する(飛び出る)病変の総称で下記が含まれます。
(1)癌に移行しない非腫瘍性病変=多くは過形成病変→グループ1、2に相当
(2)癌に移行する可能性を有する良性腫瘍性病変=腺腫→グループ3、4に相当
(3)癌(がん:悪性腫瘍性病変)→グループ5に相当
(4)非上皮性病変(粘膜下腫瘍:カルチノイドなど)

(4)については頻度も少なく別項としますが、病変を大腸内視鏡で見つけた場合は、治療しない、内視鏡切除する、外科手術治療(他 化学療法など内視鏡切除を越えた治療)の3通りしかなく専門医であれば、生検(一部組織を採取する)せずに大部分の病変は、即座に内視鏡で判断できます。「内視鏡切除」で済むのか「外科手術治療(他)」となるのかの分かれ目はリンパ節転移を伴うかどうかであり内視鏡では切除できないリンパ節に転移がない条件が内視鏡切除対象です。この分かれ目は「腺腫(良性腫瘍)か癌(悪性腫瘍)か」ではなく「癌浸潤が粘膜下層1000ミクロンまで(追加条件あり)より浅いか(図のBまで)深いか(図のC、D)」ですので、大腸内視鏡で大腸腫瘍を見つけた際には、癌浸潤の評価ができない「組織の一部を採取する生検」では意味がなく、内視鏡検査の重複を避けるためにも「発見と同時に切除まで完結」することが求められます。クリニックの集計(左の表をご参照ください)でも40歳以上では約半数の方にで内視鏡治療対象となる腫瘍性病変が存在し、その99%はその場で切除できています(青のボックスが年齢別大腸内視鏡検査総数で、その中で病変を切除した方は赤のボックスで示し、その割合をパーセンテージで数字で示しています)。

大腸癌は増加の一途を辿っています。また日本人女性の死亡率1位と最近報道され早期発見が益々重要になってきました。現在健康診断や人間ドックで採用されている大腸癌検査は便潜血検査ですが、確かに便潜血検査を毎年行うと大腸癌死亡率を下げたという報告はありますが(Minnesota Study 1997)、便潜血検査は進行癌(図のD)が存在していても15%(2回法)〜25%(1回法)が陰性となってしまうのです。ましてや前癌と考えられている大腸腺腫の発見には便潜血は殆ど無力といえます(腫瘍マーカーもほぼ同様の有効性です)。大腸癌で命を落とさないためにはリンパ節転移を伴わない段階、すなわち早期癌の中でも癌浸潤が浅い段階までの発見し切除することが重要ですので、残念ながら便潜血検査が陰性であることだけでは万全とはいえません。

現在のところ、大腸癌の予防は、大腸内視鏡検査を受けて頂き腫瘍を「内視鏡切除」することに尽きるといえます。40歳を越えたら無症状ではあっても大腸内視鏡をお受けになり、切除すべき病変を残さず取りきる(クリーンコロン)ことが重要です。特に、家系にお若い時に大腸癌になった方、複数の大腸癌や大腸癌以外の癌と重複した方、他がおられる場合は遺伝の関与が考え留意していただくことが重要です。サイズが大きくても腺腫または癌の深さが図のBより浅い場合、すなわち転移がない場合には、入院治療になりますが切開剥離法(ESD)で内視鏡治療でき院長自ら複数の施設で現在も施行しています。さらに残念ながら(大きさが小さくても)図のCより癌が深い場合、すなわち転移の可能性があり外科手術でリンパ節廓清が必要な場合では、開腹手術より腹腔鏡手術(内視鏡外科)がはるかにお体に負担が少ないことも知っておいていただければ幸甚です。

 

 

 

1. 内視鏡検査は辛いと聞くのですが。麻酔の注射も怖そうですが状況を教えててください。

大腸癌の予防のためには腫瘍性ポリープを早期に大腸内視鏡で切除することが重要ですが、腺腫といわれる癌の前段階病変に対しては便潜血検査はほとんど無効であり、内視鏡検査による診断治療が重要です。また、胃癌のリスクを有しているピロリ菌陽性の方にとっては胃内視鏡による定期的な検査が不可欠です。

従って、繰り返し受けることが重要な内視鏡検査で一度でも苦しい体験をすることは避けるべきであり、十分な内視鏡観察をするためにも苦痛のない状態での施行が必須です。従って、医療従事者側は楽に内視鏡を受けていただくことに関して最大限の努力と細心の注意を払って準備すべきと考えています。

院長は豊富な内視鏡検査の経験を有しており、胃内視鏡・大腸内視鏡ともに約9割の方にとっては鎮静剤なしでも楽に検査をうけていただける技量を有しており、大腸内視鏡検査では盲腸到達率99%盲腸到達時間平均5分ですが、高度の憩室で細くなった腸、逆に非常に長い腸、婦人科・外科手術既往の癒着の場合は残念ながら苦痛を伴う場合もありますし、苦痛の感じ方そのものにも個人差があります(蠕動の強い過敏性腸症候群の場合など)。従って、大腸内視鏡では(盲腸部到達時間がやや難易度が高くでも10分以内で挿入できる技量が前提ではありますが)全ての方に苦痛を感じない検査を施行するためには鎮静剤が必要と考えています。また、胃内視鏡こそ、挿入技術でカバーできない嚥下反射が強い方がおられますし、検査が初めての場合は緊張して当然で、それだけで精神的に苦痛です。

従って「鎮静しないでも楽に検査を施行できる技量(無理な操作をしていない)により、ご希望を前提に総合的に判断し、患者様個々の状況に応じた鎮静を加える」ことで初めて、安全、かつ、苦痛とは無縁の検査を提供できると考えています。この点は、院長自身内視鏡検査を受け、苦痛を発生する状況をわざと作り痛みを経験した経緯から、いくら短時間であっても、少しでも苦痛がある状態での強引な検査継続はあってはならないと肝に銘じているからです。

当クリニックでは患者様のご希望により下記(A)(B)(C)のいずれかで検査を開始し、必要であれば検査中の鎮静剤・鎮痛剤追加もきめ細かく対応しています。申し上げましたように楽に検査を受けていただくことは十分に内視鏡観察を遂行できること直結しますので、過去にご経験がおありの方で(A)でも十分楽にお受けになれる場合は別にして、特に内視鏡検査が初めての方には鎮静剤投与をお薦めします(静脈注射による麻酔で、全身麻酔ではありません)。

(A)鎮静剤を使用しない
(B)ぼやっとするが検査は覚えている程度に鎮静剤を使用する(ご自身の画像を見る事ができる)
(C)検査そのものを覚えていない程度に鎮静剤を使用する(眼が覚めたら検査が終わっている)

薬の効果には個人差がかなりありますが(睡眠導入剤、安定剤常用、アルコール多飲の方は効きが悪いです)、豊富な経験から、鎮静剤の種類、量をきめ細かく調整しご希望を叶えるよう努力し、経緯は詳細にカルテに記録し次回に活かせるよう対応しております。また鎮静剤の合併症である呼吸抑制に対するリスクマネージメントも万全ですので遠慮無くご希望をお聞かせください。

強い鎮静をすると大腸内視鏡で穿孔のリスクがわからない、との情報もあるようですが、穿孔のリスクは、内視鏡挿入時の術者の感触で判断すべき(できる)ものであり、患者様の痛みを指標に判断すべきものではない(不要)と考えます。

なお、上部については経鼻内視鏡も選択いただいており、経口内視鏡で以前お辛かった方で鎮静剤投与を希望されない場合には選択肢としてご相談下さい。

 

 

 



前ページspaceTOPページspace次ページ

- Topics Board -